地方回帰や自然派指向は都会の大量消費への反発からきた、消費行動の変化

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前にも書いた気がするけど、一部の地方回帰や自然派指向は一部の消費行動の変化で、ムーブメントではないと思っています。雑誌や暮らし系のホームページなどではずっと前からそんな特集はあったし、そういうものを好む人は一定数いた気がします。だいたい数年ごとにそうして消費行動が変わり、また色々なものが消費されて行く流れはそんなに変わっていない、と思っています。
 
話は変わりますが、約20年くらい前にカフェブームが起きて、カフェはおしゃれな若者の集まる場所として一気に立ち位置を確立しました。
その流れでインテリアブームのようなものがおきて、生活にこだわる人が増えたかのようにインテリア特集が取り上げられるようになったけど、実際にイームズみたいな高価な椅子を買う人は、本当に家具を愛する(自分も含めた)一部の人たちで、これってよくよく考えてみると、ドンキホーテで売っているようなブラックライトやモフモフを車につけるのと何ら変わりない。ただ矛先が違うだけ。
 
豊かな時間を過ごしたいと思っても、実際は主婦の方たちは朝ごはん、お弁当、送り迎え、自分も働きに出て。本当に頭が下がります。お父さんたちは毎日(ちょっと行きたく無くても)仕事に向かい、帰りたいけど雰囲気で帰れないから遅くまで仕事をしていたり。そんな人々のおかげでこんな暮らしが成り立っている。本当はそれがリアリティであり日常。
 
何となく地方に関わっていたり、環境に関わっていると良いことをしているように見えるけど、毎日一生懸命働いている方たちがどれだけ尊いのかと、本当に思う。働いている両親がプライベートのために有給を使っているのをみたことがなくて、自分が社会人になって個人的な事情で会社を休む人を見て純粋に驚いた。僕は親のそういう姿を見ているから、「働くママだって(女性として)輝きたい」とか、そういう「自分のために!自分のために!」と強く主張してこられると反発したくなるのかも知れない。「働くママだって」とか言わなくても、一番近くの家族にはちゃんと伝わっていると思うから、そんなに隣と比べなくてもいいと思う。みんなそれぞれの100点だと思う。
 
僕たちが今取り組んでいる古民家を利用したプロジェクトは、地方回帰や自然派指向は都会の大量消費への反発ではありません。
 
たまたま、両親が田舎に移住したいというたっての希望から三重県の田舎の家を購入したことから始まりました。リフォーム中に近くの家が壊されてソーラーパネルになるかも知れないという話を聞きつけ、大家さんにやめてほしいとお願いしに行ったところ、安く譲っていただけるという話になり、投資の金額を計算したときに、将来村の人たちが働いたり、楽しめる場所に出来る可能性があると思ったから、僕の会社として引き受けることにしました。
 
だから、よく分からないムーブメントに乗っている訳でなくて、ある意味シビアなビジネスの話かも知れないし、将来自分が働ける場所を作っているかも知れないし、村の方たちが喜ぶ話かも知れないし。
 
田舎を何とかしようという話は、行くこと自体が目的になっていることが多くて、農薬の使わない野菜を作りたいという声は、今売られている野菜が良くないという前提で語られていることが多い気がする。
 
自分は良いことをやっていて大きな闇に立ち向かっているんだというヒーローを演じることは意外に簡単で、でも戦後に十分な食糧が確保されて、農家さんの負担を少しでも減らすために品種改良や農薬や肥料が開発されて、毎日お腹がすくことが少なくなった。これは決して悪いことじゃなくて、みんなの努力が実った結果だと思う。だから僕たちはある程度安心して暮らせる前提を当たり前に思って、それを批判することはしてはいけないと思う。道路が凸凹してないのも、信号が整備されているのも、水道から水が出るのも、電気が使えるのも、当たり前じゃない。
 
僕たちの三重県でのプロジェクトは、そんな先輩たちの努力を受け継ぎながら、例えば少ない量しかできないけど、パートナーの農家さんがたくましく育てた、美味しい野菜を提供できるお店を作りたいし、楽しんでもらえる場所を作りたい。これは大量消費への反発ではなくて、僕たちがこの場所でお客さんにご提供できる最大限のおもてなし。
 
都会の雰囲気のいいカフェを楽しむのとまた違った良さを提供できるように、現在は上の写真の通り、頑張って片付けをしています。まだまだこれからですが、気長に僕たちのプロジェクトを見守っていただけると嬉しいです。

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